2015年5月25日発行の「氷川丸ものがたり」を原作として、2015年7月に長編アニメーション映画「氷川丸ものがたり」が完成しました。この映画を通じ、「生きることの素晴らしさ」「海の魅力」「平和の尊さ」を、次世代を担う子どもに伝えたいと願っています。
ストーリー
1930(昭和5)年5月、横浜港からアメリカ・シアトルに向け、処女航海に出航した氷川丸を、岸壁に座りじっと熱い目で見つめる13歳の平山次郎がいた。野球少年の次郎は、母を関東大震災で亡くし、南京ソバの屋台をひく父の源三を手伝いながら、二人で暮らしている。
ある晩、屋台で手を動かしながら、氷川丸に乗ってみたいと熱く語る次郎を、微笑んで見つめる二人の紳士風の客がいた。彼らは、氷川丸の秋永船長と松田事務長だった。それがきっかけとなり、次郎の氷川丸での日々が始まった。「軍艦氷川丸」と呼ばれる船での仕事は、想像以上に厳しく過酷だった。しかしそこには秋永船長をはじめ船の仲間の次郎をあたたかく見守る目があった。
ある日、包丁で指を切った次郎は、治療してもらった診療室で菅田キヨ子と出会う。次郎は淡い恋心を抱くのだった。
1941(昭和16)年、氷川丸は政府の徴用船となり、その後、海軍特設病院船となった。次郎ら乗船命令を受けた船員たちは、南方の島々で負傷兵を収容する仕事に携わる。そしてついに次郎にも赤紙が。
次郎は野戦病院で思いがけずキヨ子と再会する。彼女は氷川丸を降りた後、日本赤十字の看護婦となり戦地に派遣されていた。次郎たち負傷兵は、沖に碇泊していた病院船へ移されることに。待っていたのは氷川丸だった。懐かしい仲間の姿を見つけ、肩を叩きあって再会を喜びあった。
日本への帰途、嵐のなかで、氷川丸は磁気機雷に触雷。
「船が……船が、悲鳴をあげている……!」
懸命の排水作業が続けられ、氷川丸は大きく傾きながらも、なんとか港にたどりつく。
やがて終戦。氷川丸は病院船の徴用を解かれないまま、復員兵や残留日本人の引揚船となる。その後ようやく、晴れて商船に戻り、貨客船として念願の北米航路に復帰を果たしシアトルを目指す。船上には次郎や船員たちの喜びに満ちた笑顔があった。
作品概要
監督 大賀俊二(おおが・しゅんじ)
1956年11月22日生まれ。東京ムービーを中心に数多くの作品でテレビアニメ演出やアニメ映画監督を務める。代表作に「それいけ!アンパンマン」劇場版監督(1999, 2001,2002)、OVAシリーズ、「ゴルゴ13」(2008・2009年テレビアニメ版)などがある。
監督より
「この作品は、次郎少年が勇気や正義を持って船とともに戦争という過酷な時代を乗り切っていく、感動的な作品になりました」
ナレーション 戸田恵子(とだ・けいこ)
女優、声優。10代から歌手や女優として活動する傍ら、79年に声優としてデビュー。88年放送開始のアニメ「それいけ! アンパンマン」のアンパンマン役は現在まで続き、広く知られている。ドラマ、映画など幅広く活躍。最近ではNHKの朝の連続ドラマ「まれ」のナレーションを務めた。
エンディング・テーマ 小田和正(おだ・かずまさ)
シンガーソングライター。横浜市出身。高校の同級生と結成したバンド、オフコースでデビュー。1989年オフコース解散後、ソロ・アーティストとして活動。「さよなら」「ラブ・ストーリーは突然に」「たしかなこと」など多くのヒット曲を生みだし、今も第一線で活躍する日本を代表するアーティスト。